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電力について(中学2年 理科 電気) [小中理数系論]

メインサイトhttps://physicsreport123.seesaa.net/article/484912249.html?1640155660 に転載(2021/12/22)


電力について(中学2年 理科 電気)(発展学習は先生用です。)

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私たちの生活の中の電気
 私たちはコンセントから供給される電気を電熱器(オーブンやストーブ)や電球(LEDや蛍光灯)、モーターを動かすことによる動力として使用し日々の生活を豊かにしています。

 では、電気とはいったい何なのでしょうか?皆さんも自分で少し考えてみてください。答えはたくさん上がりそうですね。例えば、「電流です。」とか、「電圧です。」とか。これらの答えも間違いではないのです。でも、もっと広く考えてみると、電気はエネルギーと考えることができるのです。電気のエネルギーを熱に変えてくれるのが電熱器、光に変えてくれるのが電球、動力に変えてくれるのがモーターなのです。

 ここで、電熱器や電球は材料の電気抵抗の特性を利用したものです。モーターは磁石を使った装置です。ここからは、電熱器や電球を利用して話を進めたいと思います(興味のある皆さんはhttps://chuugakurika.com/2017/11/02/post-321/を見てください)。

電熱線と電球
 ほとんど抵抗がない銅線などに電流を流すことを考えましょう。銅は電気抵抗が極めて小さく、熱も光も発生しませんので、電熱器や電球の材料にならず、電気を無駄なく通す道としての役割を担う導線として使われます。
 一方の電熱器や電球の材料はある程度の電気抵抗を持っていて発熱や発光の特徴を持つものが使われるのが特徴です。一般的によく知られている材料は、電熱線の場合はニクロム線(ニッケルとクロムの合金、電気抵抗は銅の70倍)、電球の材料としてはフィラメント用のタングステン(電気抵抗は銅の3.2倍)です。
 オーブントースターなどは、熱くなるときに赤黒く光ります。ですから電熱線の材料だから光は出さずに熱を出すというわけではなく、効率的に熱を発生させるけれども光も同時に出すこともあります。同じように電球が熱くなるのも、皆さんご存知ですよね。効率的に熱を出してくれる物質を電熱線の材料に、効率的に光を出してくれる物質を電球の材料にしているのです。

電気のエネルギーを表す電力と電力量
 電熱器を考えて見ましょう。この電熱器には、電圧がV [V]かかっており、電流がI [A]流れているとします。オームの法則
V [V]= I [A]× R [Ω],  ①
を適用すると、この装置の抵抗値 R= V/I [Ω] となります。
 この電熱器は熱を出すことで、電気のエネルギーを熱のエネルギーに換えてくれるのですが、その際、電気のエネルギーをどれだけ使っているのか?を表す量として決められたものが、電力Pで、その単位はワット [W] (*1)で、
電力 P [W] = I [A] × V [V] ( = R/V2 = R I 2 ) ,   ②
となります。カッコ内はオームの法則で書き換えた式です。
 電力 P [W]は、この電熱線が1秒間に使う電気のエネルギーで、熱量[ J ](ジュール)(*3)という量を使って、 1[秒]にP [ J ]の熱量が使われることを表すので、 P [W] = P [J/秒]となります(*2)。
 電力は1秒間あたりに電熱器(電化製品)が使う熱量ですから、どれだけの時間使ったかで、全部の熱量が計算できます。ここで、この電熱器を、t[秒]間使用した場合に使われる電気エネルギー(熱量)を電力量(ジュール熱)と呼び、
電力量(ジュール熱)= P [W]×t[秒] = Pt [J],  ③
となります。実用的な電気量の表示は、電力会社では、1000[W]を1時間使った電力量1[kWh](キロワット時)を電気量の単位として採用し各家庭の電気の使用量を示しています。

********** 熱量の単位、他にもあるよ ********** 
 皆さんがよく知っている熱量単位はキロカロリーです。1[ml](1cc:小さじ1/5杯分)の水の温度を1[℃]上げるのに必要な熱量を1[cal(カロリー)]として、k(キロ)をつけて、1000[cal]=1[kcal(キロカロリー)]となります。
 カロリー[cal]とジュール[J]の関係は、1[cal]=4.2[J]となっていて、1カロリーのほうが1ジュールよりも約4倍も大きいです。
********** ********** ********** ********** 

**********  脚注 ********** 
(*1) ワットという単位は、産業革命の中心的存在の蒸気機関の効率を飛躍的に高める発明したジェームス ワットへの栄誉を称えて付けられました。
(*2) 電流が1秒間に運ばれる電荷量(電気量)と決めているので、式②の電力=電流×電圧から、電力は1秒間あたりの量にならざるおえないのです。
(*3) イギリスの物理学者 ジェームズ・プレスコット・ジュールへの栄誉を称えて付けられました。
********** ********** ********** ********** 

 練習問題
[1] ①~⑧の空欄を、語群から正しいものを選びなさい。
 電気が出すエネルギーPを( ① )と呼び、電気をエネルギーに変換する装置にかかる電圧Vとそれに流れる電流Iを使って、P=( ② )で計算される。( ① )は1秒間あたりに放出されるエネルギーで、単位は( ③ )か( ④ )を使う。( ④ )は、熱量の単位を使って表されている。電気によるエネルギーを( ⑤ )熱や熱量と呼ぶこともあるが、正確には( ⑥ )と呼び、( ① )を放出した時間を乗じることで求めることができる。( ① )Pをt 秒の間 出力したら、( ⑥ )= P×tとなる。1( ③ )の電気エネルギーを1時間使用した時の( ⑥ )を 1( ⑦ )と書くが、これを熱量の単位で表すと( ⑧  )[ J ]となる。
☆☆ 語群 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
VI、 V/I、 I/V、 [W]、 [Ω]、 [V]、 [A]、 [ジュール/秒]、
[W時]、 ジュール、 ワット、 
電力、電力量、1、60、3600
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
1.jpg
[2] 400[W]と800[W]の切り替えができる家庭用電源100[V]の電気ストーブがある。
(1)ストーブの熱を出す部分はなんと言われるか答えなさい。   (       )

(2) 400[W]と800[W]で使った時の、このストーブにかかる電圧[V]と電流[A]と、ストーブの電気抵抗[Ω]を求めて、右表を完成させなさい。
2.jpg
(3)このストーブを400[W]と800[W]で30分使った時の、電力量を計算して、単位を[W時]と[J]で表し右表を完成させなさい。
3.jpg


(発展学習) 先生用 電力と抵抗と電圧と電流
 ここでは、電圧と電流に抵抗と電力をからめた関係について、掘り下げて考えましょう。
 まずは、下図(左)のような、電熱装置と電源(電池)をつないだ簡単な回路を考えましょう。

4.jpg
 この回路の各地点をア~エとした時、電流を水に電圧を水路の高低に例えて描いたものが、右になります。
 この回路で、ア-イ間とウ-エ間の電圧は0で、電圧が観測される場所はイ-ウ間とエ-ア間です。そして、この回路には不連続な部分があり、それは、一見は一体化している電池内の陽極と負極です。これに従って、右図の様子を書き出すと、
上の池ア(電池のプラス極)から湧き出した水(電気)が同じ高さの断崖イまで流れます。
断崖イから滝になって滝壺ウまで水(電気)が落ちます。
この滝の部分が電熱器(電球)です。
滝壺ウから下の池エ(電池のマイナス極)に水(電気)が流れます。

となります。

 次に、この回路において我々が制御できるところはどこかを考えましょう。それは電圧と電熱器部分です。つまり電圧と電流の通ることが可能な道があって初めて電流が流れるのです。そして、電圧を水路の高低に例えたことを言い直せば、電圧は目には見えない電気的な高低を表す量だと言えます。
 では、水に例えた電流を少し詳しく考えます。電流の元は電気を帯びた小さな粒で、一般には電子です。電圧は電気的な高低があるだけですが、この高低のある道に沿って電気を帯びた粒が流れたものが電流で、電流が電気装置を通ることによって光や熱へと変換されていくのですから、電流は電気を帯びた粒の流れ以外に、電気のエネルギーを運ぶ流れという性質を持つと考えても間違いではありません。目に見えない電気的な高低である電圧自体が、電気のエネルギーで、それに従って電流が抵抗(電気装置)を流れて電気のエネルギーを他のエネルギーに変換することが、電気エネルギーの利用方法の核心とも言えます。
 電力P=IVで算出されることは、電圧と電流によって電気機器を通して生み出す恩恵のために使用されたエネルギーを算出している事に他なりません。 
 電圧と電気を帯びた粒子を提供するのが電池(電源)です。乾電池では、電気を帯びた粒を負極に貯めることによって、電圧と供給する電気を帯びた粒を蓄えています。そして、この粒がなくなれば電池が切れたことになります。
 冬になると起こる不快な静電気現象は電圧が何万ボルトもありますが、電流が極めて少ないため、破壊力が少ないと言われます。つまり、電気を帯びた粒を供給するところがなく、電流が極めて少量しか流れないのです。
 
 最後に、科学的本質性は 電圧>電流と書くこともできると思いますが、電圧の本質、そして電流を起源とする磁場について触れておきます。これは、高校に入ると習うのですが、実は電気を帯びた粒が存在すると、そこから電気的坂(高低)である電圧ができるのです。実はこれが、静電気現象です。
 また、電磁誘導の法則として、電流が流れると磁場が発生し、電気現象と磁気現象は切っても切れない関係です。これまでの議論から、電磁気現象の本質量を順番に書き出すと、
電気を帯びた粒>電圧>電流>磁場,
となるのです。

参考文献
電圧について(2020年5月31日日曜日);指導者用
https://longtext.blogspot.com/2020/05/blog-post_31.html?spref=tw

2) 中学生にもスッキリわかる電流 (2016-11-04);指導者用
https://seidenba.blog.ss-blog.jp/2016-11-04

3) オームの法則を馬鹿にしてはいけない。電球のワット数と抵抗値と電流について
https://ameblo.jp/ryuseinaoki/entry-10057997995.html 

4)フィラメント(明るく光る部分)は電圧依存する抵抗値“フィラメントの固有抵抗値”というものがあり、200Vの電圧をかけた場合どれくらいの抵抗値になるかは、そのフィラメントの材料次第だそうです(大体はタングステンらしく、エジソンは日本製の竹?という逸話もあるそうです)。
ツイッターより


後記
 中学校の電流については、ポロポロと記事を揚げてきましたが、なかなか統一感がなく、難しい記述ばかりでしたので、今回は、生徒にもわかるように書きました。今までの記事は、上記の参考文献に記しました。
 電力のところは、自分も中学でつまづいた部分です。電力だけを取り上げて説明すると浅い議論になるので、この機会に電流と電圧と電気抵抗について、深めの議論を行いました。やはり、電気のエネルギーとして利用をすっ飛ばして、電力P=IVから話を始めてしまうと、理解が難しいです。また、電力は熱量率(単位時間あたりの使用熱量)であり、電力量が使用熱量であるという、最も基本的なルールもないがしろになっている上に、電力の単位はワット[W]、電力量の単位はW時[Wh]、でほとんど頭の中で単位による理解が破壊されてしまっていると言っても過言ではありません。
 この辺りは、やはりかなり専門的に学んだ人でないと、手が付けられない部分であり、文科省の中できちんと議論をしていかなければ、様々な専門分野からきている現場の理科の先生方も困ってしまうところだと強く感じています(だから、頑張ったよ、自称 研究者、笑笑)。

練習問題答え
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中学生に電流を伝えよう! [小中理数系論]

majime_na_hanashi seesaa ブログへ転載
https://physicsreport123.seesaa.net/article/484912761.html?1640157814 (2021/12/22)

中学生にもスッキリわかる電流

 中学では、「電流は、電気の流れる量で、単位はアンペアです。」と言われてしまうのです。
 従来通りでは、電流をスッキリ理解するのは難しいかと思います。そこで、ここで少し解説します。

 オームの法則を使える事、抵抗の配置と電池の配置が直列と並列の時で、電圧,電流,抵抗の挙動を覚えておく事で、高校受験は対応できます。
 しかし、理科に対して特性を持つ生徒にとっては、電流はのどに何かが突っかかった感じで気持ち悪い量になることでしょう。

****************************
 まず、理科としてとても大切なことは、生徒に流体という概念を理解させることです。“流体の量(流体量)”を一義的に決めるには、各位置での流体の密度移動速度方向の3つの変数を規定しなくてはならない事を教えてあげてください。
 一方、電流とは、
 “1秒間に1クーロンという電気量が動いた電気の流れを1アンペア”
 と定義しています。
 電流の向きは辛うじて導線の正から負の電位の方向で決定できますが、密度も速度の変数も欠落し、動く総電気量で電流は定義されるので、電流は流体量ではありません。しかしながら、密度、速度の情報は全て電流に含まれています。ただ問題点は、それと同時に電流の中には導線の形状(詳しくは、電流の動く向きに対する垂直な断面の大きさ)の因子も含まれるので、電流は流体量と比べると曖昧な量です。ただし、技術面では電流は利便性が高いので重宝され使われています。

 流体量をきちんと定義をした上で、電流は技術面で使うためには非常に利便性が高いマクロ的量であると、中学2年生に説明し理解させることができるかどうかが、生徒たちに電界・磁界の理解度を高められる秘訣でしょう(ここまでが、先生として中学生に理解させるラインとして設定してもらいたいです。)。

*****************************
(以後の記述は発展で、高校の内容ですが、高度な中学生や高校生への助言のためにご紹介します。)
    
電流に流体量がないのかと言えば、そうではありません。電流密度σという量が流体量に対応します。
    ⇓
以後は、太字で方向のある量(ベクトル)を表すことにしましょう。
    ⇓
ここでは、電流密度を電流密度流σと呼びます。電流密度流σは1平方メートルあたりの面積を通過する電流を表し、この単位は[A/m2]です。
    ⇓
実際の電流II=Sσ(Sは導線の電流に対する垂直面)となり、導線の形状因子が分離されます。
    ⇓
σは、さらにミクロ的に分解できます。その導線を作る導体の中の電気を帯びた移動可能な物質;荷電粒子(これが電子)の密度をρ[1/m3]として、その電気物質一個が持つ電気量と電流方向の速度をe[C]、v[m/s]とすれば、1秒間に1平方メートルの面積を通り過ぎる電気量はeρvとなります。
これは、つまり、σ=eρvを導きます。
    ⇓
以上より、電流密度流σが、速度vと電気密度eρによって一義的に決定されていることがわかり、電流密度が純粋に流体量であることがわかるのです。                    〜おわり〜
上記の内容のワードファイル中学生にもスッキリわかる電流.docx

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